日本で年金の支払いをした外国人が母国へ帰国する場合は一定の条件を満たしたうえで、脱退一時金という支払った年金の一部を返還請求することができます。

今回はそんな脱退一時金の手続きについて解説をします。

脱退一時金受給の要件について

日本にて就労やその他の理由により滞在をしていた期間中に国民年金や厚生年金保険及び共済組合などに加入していた期間については、被保険者資格を喪失して日本を出国した場合、下記、1~4すべての条件に該当するときに脱退一時金を請求することができます。

  1. 日本国籍を取得していないこと
  2. 国民年金や厚生年金保険及び共済組合などに加入していた期間が6カ月以上あること
  3. 日本に住所をもっていないこと

※市区町村に転出届を提出した上で、再入国許可・みなし再入国許可を受けて出国する外国人については脱退一時金の請求をすることができますが、転出届の提出をしなかった場合は再入国許可の有効期間が経過するまでは国民年金の被保険者とみなされることから、脱退一時金の請求はできません。年金をうけとっていないこと

4.年金をうけとっていないこと

手続き必要書類

  1. 脱退一時金請求書
  2. パスポートの写し
  3. 日本国内に住所がないことを証明する書類
  4. 振込先の口座情報と請求する外国人本人の口座であることが証明できる書類
  5. 国民年金手帳・その他基礎年金番号が確認できる書類

※日本を出国する前に市役所などで転出届を提出した場合には住民票の削除情報より日本国内に住所がないことを日本年金機構が確認をすることができるため、3の書類は不要となります。

脱退一時金請求の際の注意事項

〇 日本で年金を受け取るのに必要な年金加入期間10年(120カ月)以上ある場合、将来、年金機構より日本の老齢年金の受給をすることができます。しかし、脱退一時金の受給をした場合、脱退一時金を請求する以前のすべての期間が年金加入期間からははずれてしまいます。

〇 支給額計算の上限が2021 年より 3年(36カ月)から5年(60カ月)に引き上げられました。 脱退一時金の支給額は、日本にて年金を支払った額や加入期間に応じて、最大5年間の期間を上限として算出されます。その場合でも、脱退一時金の支給対象となる国民年金保険料納付済期間等又は厚生年金保険及び共済組合等の合計加入期間が2021 年 3 月以前のみの期間となる場合は、3年が上限となります。

※ 複数回、日本での在留を繰り返して日本で年金を通算で37カ月以上支払う予定の方で、支払い・加入期間に応じた脱退一時金の受給を希望される場合には、各在留終了後の帰国の都度、請求が必要になる場合があります。例えば、3年間で第1号・2号技能実習を終了し帰国の後、第3号技能実習生として実習を受けようとする方は、第2号技能実習終了後および第3号技能実習終了後に請求をすることで各加入期間に応じた支給を受けることができます。

〇 日本と年金通算の協定を締結している国の年金制度に加入している外国人の場合、一定の要件を満たす条件で、加入期間を通算して日本及び母国の年金を受け取ることができる場合があります。その場合でも、脱退一時金の受給をした外国人については、脱退一時金を請求する以前のすべての期間が年金加入期間ではなくなるため、通算することができなくなります。

〇 脱退一時金を請求者することができる外国人が受給せずに死亡した場合は請求者の死亡当時、生計を同一にしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他3親等内の親族が代わりに受給することができます。ただし、外国人本人が死亡前に請求書を提出している必要があります。

〇脱退一時金受け取りまでにかかる期間

日本年金機構に書類が受理されてから、受け取りまで約3~4ヶ月かかり、所得税として徴収された金額については請求~受取りまで約1~2カ月かかります。

〇脱退一時金を受け取ることのできる通貨について

日本の銀行の口座を振込先口座に指定する場合は、日本円で振込まれ、海外の銀行の口座を振込先口座に指定した場合は、決められた通貨で送金されます。

アメリカドルやユーロなどによる支払いが中心で、技能実習生の母国が多いアジアのほとんどの国々ではアメリカドルにて支払われており、中国、韓国、ベトナム、マレーシア、インドネシアではアメリカドルで支払われます。

支払いの際の為替レートは、支給決定された月の平均為替レートをもとに支給額が算定されています。返還請求のための請求書を提出した時点の為替レートではない点について留意しておく必要があります。支給が決まると、日本の大手都市銀行経由で振込が行われています。

また、どうしても脱退一時金を日本円で受給したい場合は、請求書の受け取り口座の欄に日本国内にある銀行口座をしてすることで日本円での受け取りが可能です。

しかし、その場合でも本人名義の口座である必要があることに注意が必要です。

脱退一時金の際にかかる所得税の返還について

○非居住者の方が支給を受ける厚生年金保険の脱退一時金は、その支給の際に、20.42%の所得税が課されます。

ただし、後に「退職所得の選択課税による還付のための申告書」という書類を税務署に提出することで、源泉徴収された税金の返還請求をすることが可能です。(国民年金の脱退一時金は、源泉徴収されないこととなっているため、留学生などはこの請求は不要な場合もあります。)

○返還請求をするための請求書の提出先は、日本にいた時の最後の住所地又は居所地を管轄する税務署となります。申告書の提出・還付金の受け取りのためには帰国前に、日本国内における最終の住所地又は居所地を管轄する税務署へ「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を提出する必要があります。

※納税管理人とは日本に住所がある方であればだれでもなることができる資格です。

※帰国前に日本で「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を提出し忘れた場合でも返還請求の際に提出をすることで納税管理人の選出ができます。 ○脱退一時金が日本年金機構より送金されると同時期に「脱退一時金支給決定通知書」が母国の本人住所へ郵送されます。原本を所得税・消費税の納税管理人に送付することで所得税分の返還請求手続きを進めることができます。

まとめ

特定技能制度が始まり、技能実習生で入国した外国人でも2つの制度を利用することで最長10年間日本にて就労をすることが可能となりました。(特定技能2号へ移行する場合は無期限での就労可能性があります)

脱退一時金の返還請求をすることで支払われる金額は申請する外国人の収入にもよりますが、少なくない金額であるため、なるべく多くの期間の返還請求をすることが望ましいですが、例えば技能実習生から特定技能へそのまま移行した外国人の場合は返還請求することのできる最長5年間以上の期間を過ぎてもそのまま継続して日本で就労する可能性もあります。

そのような場合には5年を過ぎた期間については、返還請求することができないため、もし、脱退一時金を受給したい場合には一度退職・転出の手続きをした後に帰国する必要があります。 また、特定技能2号へ移行した外国人についても、無期限での就労可能な在留資格を得ることができますが、外国人が脱退一時金の受給を希望する場合にはルールについて留意する必要があります。

この記事を書いた人

ヤマシタハヤト

ユアブライト株式会社 海外人材担当 主に特定技能に関する情報を発信しております。

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