特定技能・技能実習
2020年度の在留資格取消件数が過去最多を更新、今後、特定技能の在留資格保持者も含まれたその詳細な内容を紹介します。
出入国在留管理庁より発表された2020年度の在留資格取消件数が1210件で過去最多の数字となっています。
今回は、最多更新をしたその事例や在留資格別の人数なども踏まえて解説をします。
在留資格取消とは
日本に中長期間滞在している外国人のほとんどはその身分に応じた在留資格を取得した上で日本に在留しています。
外国人は必ず在留カードを携帯することが義務付けられており、その在留カード上にどのような身分で日本に滞在することを許可されているのかやいつまで滞在することができるのかについて記載されています。
そんな在留資格ですが、それぞれの外国人が、与えたれている在留資格以外の活動をしている場合などには在留資格の取消をされる可能性があります。
また、在留資格取消手続きが開始された後でも手続き中に対象の外国人が日本から出国した場合は取消処分とならず終止処分となります。
2020年度では331件のケースで手続き開始後に終始処分となっております。
※終始処分とは取消手続きを開始したが結局取消に至らなかったことを言います。
在留資格取消になる主な理由
在留資格取消となるには様々な理由がありますが、今回は主な理由について紹介します。
●在留資格申請の際に虚偽の申請をしていたことが発覚した場合
在留資格を取得する際には在留資格申請をしますが、その申請の際に虚偽の申請をして在留資格を取得した場合などがこれに該当します。
〇入管法第22条の4第1項第1号に該当する場合
日本への上陸拒否事由には該当しないとして上陸許可を受けた場合が該当します。
過去に退去強制されたことから上陸拒否事由に該当していたが、退去強制歴を申告せず上陸拒否事由に該当しないと偽って上陸許可を受けることなどで摘発された場合があります。
〇入管法第22条の4第1項第2号に該当する場合
上記、1号以外に偽りその他不正の手段により,上陸許可等を受けた場合が該当します。
日本人の配偶者等の在留資格を更新するために日本人との結婚を偽装して日本人配偶者との婚姻実態があると装い、内容虚偽の在留期間更新許可申請書を提出して同許可を受けたことで摘発された場合があります。
この場合には最初は結婚していたが、在留期間更新の際には既に離婚していたにもかかわらず未だに結婚をしていると虚偽の申告をして申請をしています。
技術・人文知識・国際業務の在留資格を更新するために実際の行う業務とは異なる職務内容を申請書に記載した内容虚偽の在留期間更新許可申請書を提出して同許可を受けた場合に摘発された事例があります。
〇入管法第22条の4第1項第3号に該当する場合
上記、1号及び第2号以外で、不実の記載のある文書又は図画の提出又は提示をして、上陸許可等を受けた場合が該当します。
投資・経営の在留資格を更新する際に,実際には事務所が存在していないが,勤務先所在地について不実の記載がされた申請書を提出して許可を受けた場合の事例があります。
●中長期日本に在留している外国人が在留資格に基づく活動を継続して一定期間行っていない場合
〇入管法第22条の4第1項第5号に該当する場合
正当な理由なく取得した在留資格で許可されている活動を行っておらず,且つ,許可された活動とは違う活動を行い又は行おうとして在留している場合が該当します。
留学の在留資格をもっている外国人が学校を除籍されたにもかかわらず、当該在留資格に応じた活動を行うことなくアルバイトを行って在留を継続しており摘発された事例があります。
技能実習の在留資格をもっている外国人が実習先から失踪した後に在留資格で許可されている活動とは違う活動に従事し、他の会社で就労しており、摘発された事例があります。
〇入管法第22条の4第1項第6号に該当する場合
在留資格をもって在留する外国人が、正当な理由なく在留資格で許可された活動を3月(高度専門職は6月)以上行わないで在留している場合が該当します。
留学の在留資格をもっている外国人が学校を除籍されたにもかかわらず、当該在留資格に応じた活動を行うことなく3か月以上日本に在留しており摘発された事例があります。
特定技能1号の在留資格を取得している外国人が特定技能所属機関を自己都合退職した後も当該在留資格で許可された活動を行うことなく3か月以上日本に在留しており摘発された事例があります。
2020年度には初めて特定技能1号の在留資格をもっている外国人が在留資格の取消をうけており、4名の取消対象者の内、3名がこの理由にて取消をされたと思われます。
取消を受けた特定技能1号の在留資格をもっていた外国人4名はそれぞれベトナム3名、ミャンマー1名となっています。
〇入管法第22条の4第1項第7号に該当する場合
日本人の配偶者等や永住者の配偶者等の在留資格をもっている外国人が正当な理由なく許可されていた在留資格に応じた活動を6月以上行わないで在留した場合が該当します。
日本人の配偶者等の在留資格をもっている外国人が、日本人の配偶者と離婚をした後も継続して6か月以上日本に在留していた場合に摘発された事例があります。
特定技能外国人が注意すべき在留資格取消事由について
既に紹介したように2020年度では初めて特定技能外国人の在留資格取消がありました。
出入国在留管理庁のホームページに公表されている情報をみると、取消事由はそれぞれ
入管法第22条の4第1項第5号と入管法第22条の4第1項第6号に抵触したものとされています。
事例として挙げられている、自己都合退職後も3カ月以上日本に在留していた外国人に関しては、特定技能外国人は転職の自由が認められていることからも今後増えていく事例だと思われます。
技能実習生とは違い、転職が可能なため今後も失踪などの事例は少ないと考えられますが、特定技能外国人を受け入れしている企業に関しては摘発とならないように注意が必要です。
また、全体の数字をみても国籍別ではベトナムが711名、中国が162名、ネパールが98名となっており、ベトナム人の摘発者が非常に多いのが現状です。
特定技能外国人の国籍もベトナム人が最多であることを考えると今後、ベトナム人特定技能外国人の受け入れ企業はこのリスクについても考える必要があります。
また、特定技能外国人を採用する際には在留資格の確認や転職であれば前職を退職した理由などについてもしっかりと確認をする必要があります。
まとめ
今回は在留資格の取消事由について紹介をしました。
世界的に経済が停滞しているコロナ下では外国人を雇用している受け入れ企業も例外なくその影響をうけており、場合によっては雇用していた外国人を解雇しているケースもあります。
そんな状況下では外国人が経済的な理由から不本意に在留資格の取消事由に抵触するようなこと、たとえば自身の保持している在留資格とは違う活動を行うなどが増えているように思われます。
在留資格は確かな知識をもって、適切に管理をすれば、現在は特定活動で従来なら認められていなかったような活動も一時的に認められている場合もあるため、外国人が経済的に困窮する事態を減らすことができます。
一部の外国人を除いて、大半の外国人は日本にある何れかの機関に所属しているため、その受け入れ機関が責任をもって外国人の在留資格を管理することが必要だと言えます。