法人インタビュー
ロザリオの聖母会 様
障害者の方をサポートするために特定技能「介護」のベトナム人材を活用
受け入れ体制が整備できていなくても外国人材採用は始められる!
ロザリオの聖母会(千葉県)
法人本部 白井正和様
障害者支援にも外国人材を活かしたい
障害を持つ方をサポートするグループホーム事業『ナザレの家あさひ』をはじめ、ロザリオの聖母会さんは医療機関など幅広い事業を展開しています。
2021年11月に、特定技能「介護」のベトナム人女性1名を採用。障害者支援事業での外国人材の活用はまだ珍しく、同分野でのパイオニアともいえる存在です。
「人材不足で日本国内での採用が厳しくなってきたので、18年春頃から外国人材採用を検討し始めました。
当時、外国人材を活用していた近隣の特別養護老人ホームの運営者の方からいろいろなお話を聞いたのがきっかけです」
最初はEPAの利用を考えていましたが、求人倍率が高過ぎて断念したそうです。
コロナの影響で入国ができない状態に……
「その後、技能実習生の方を受け入れようということで、2018年秋にベトナムとのオンライン面談を実施。2019年の初めに、3名の方に内定を出しました。
しかし、コロナの影響で手続きが途中で止まってしまいまして、いまもまだ入国できない状況が続いています」
そのようななかで、2019年に特定技能制度の話題を聞き、利用することに決めたといいます。
「外国人材受け入れの経験がないままだったので、まずは、すでに日本国内にいらっしゃる特定技能の方を1名採用してみようということになりました。
そこで、複数の登録支援機関さんの話をお聞きして、一番安心感を持てると感じたユアブライトさんにお手伝いをお願いすることに。それまでの実績や担当者の方の丁寧な対応など、総合的に検討した結果です。
さらに、入職前・後の教育体制など、外国人材に対するさまざまなサポートが充実している点も魅力的でした」
事業や仕事への“理解”に不安が
採用にあたって、ロザリオの聖母会さんならではの不安があったようです。
「いろいろな特定技能の方と面接するうちに、『介護の仕事=ご高齢者の介護』というイメージを抱いている方が多いと感じました。
私たちの事業所では、障害を持つ方の介助を行っています。そのことをきちんと理解していただけるかという点が最大の不安でした。
皆さん「たぶん大丈夫です」とおっしゃられるのですが、入職してから『イメージとちがう』ということになってしまうのが一番心配でしたね」
そして、お仕事についてきちんと理解して、「日本語能力試験N2以上の、ベトナム人の方」という希望に合った人材の採用が決定!
「技能実習生の方々とオンラインで面談したときに、皆さんはまだN4レベルもとられていなかったので、普段のコミュニケーションが大変になるなという印象を受けました。
そこで、N2という基準を設けて、実際にN2の30代女性を採用することができました」
“明確な目標”を持つ人材を採用!
ベトナム人の方を採用しようと思った理由は――?
「近隣の高齢者介護施設などで、ベトナム人スタッフさんが働いていらっしゃったからです。職場外でのベトナム人同士の交流などもできますし、私たちが外国人材採用を勉強していくうえでも情報共有していただきながら進められるだろうと考えました」
そして、採用者の人柄も重視したそうです。
「採用した方は30代で、ご家庭を持っていらっしゃることもあって、かなりしっかりした方です。ご主人と一緒に岡山県で技能実習生として働いていて、お一人で千葉県に来られるとのことでした。
お子さまはベトナムに住んでいて、『将来、日本の教育を受けさせたい』『介護福祉士の資格を取って、家族三人で日本に住みたい』という明確な目標もお持ちでしたので、がんばって働いてくださると思いました。
私たちも、できる限りサポートしたいと考えています」
“気配り”を大切にする受け入れ体制を準備
受け入れ準備を進める際、職員の方やご利用者さまへの説明会などは特に行わなかったといいます。
「私たちの場合、『一スタッフさんが来られる』という形でスタートすることにしました。
もちろん、日本語や日常生活はできても、専門性が高い業務なので、周囲が“気配り”することは大切です。その点について、事業所の中心になる人物で役割分担しながら、本部と事業所で定期的に打ち合わせを繰り返しました。
また、岡山から千葉にお引っ越しされるということで環境が大きく変わりますので、職員寮の準備など生活環境の整備にも気を遣いました。
ほかにも『受け入れ側だけでやらなければいけない』と思っていたことをいろいろとお任せできたので、ありがたかったですね」
一緒に成長する“一人の仲間”として考える
彼女は入職後、身体的に重度の障害をお持ちのご利用者さまが暮らすグループホームでお仕事をしています。
「一軒家に4名のご利用者さまがご入居していらっしゃる施設を担当しています。一緒に働く5名ほどのスタッフが彼女をサポートして、徐々に介護の仕事に慣れていっていただいています。
日本人スタッフたちも“特別な外国人材”という意識は持っていなくて、“一人の仲間”というふうに感じているようです」
ロザリオの聖母会という法人としても、“一人の仲間”という考え方を大切にしたいといいます。
「人材確保という側面は当然ありますが、その方の人生が充実できるように『育成』という観点を大事にして、成長していける環境を提供していきたいと考えています。
新しい仕事や環境で大変なことはあると思いますが、あまり心配し過ぎても失礼かなという気持ちもありますので、ご本人の要望があれば臨機応変に対応していこうと思っています。
“外国人材”という見方ではなく、「一職員であり、“一人の仲間”」だと職員全員が考えられるようになれたらいいですね」
地域貢献も含めた、外国人材採用が持つ可能性
コロナの状況次第ですが、これから技能実習の方も入ってくる予定です。
「今後の計画としては、毎年一名ずつでも、外国人材採用の実績を積み上げていきたいと考えています。そして、その方々が経験を積んで、指導者的なポジションになっていっていただきたいという期待もあります。
また、今回の方はグループホームで就労していただいていますが、ほかの障害者支援施設でも外国人材の方にご活躍いただける可能性はたくさんあると思います。
ですから、まずは彼女のがんばりを当法人内の各施設にも見守ってもらいながら、外国人材への理解や受け入れ態勢の整備を進めていきたいと考えています」
さらに、「当法人単体でなく、地域貢献も考えている」と白井さんは語ります。
外国人材を受け入れてらっしゃる近隣の施設さんなどとも交流できればいいですね。たとえば、一緒に研修をする機会を設けるなど、業務以外の交流の場を地域ぐるみでつくっていくことも大切だと思っています」
受け入れ準備が万全でなくてもスタートできる!
外国人材を実際に受け入れてみて、率直な感想をお聞きしました。
「特定技能の方の採用に関して、採用側にとってもご本人にとっても最大のメリットは『すでに日本での生活経験がある』ということだと実感しました。
日本語のレベルも含めて、国外から“ゼロ状態”で来日される場合とは、受け入れ側の配慮の仕方がまったく変わってくるだろうと思います。
さらに、「勉強不足を痛感した」ともおっしゃいます。
「正直言いますと、私たちは受け入れ体制を万全に整備しないままで外国人材をスタートしました。
行政機関への書類の作成・申請や、定期的な届け出などについても、自分たちではわかっていたつもりでいました。しかし、実際に取り組んでみないとわからないことがたくさんあって、勉強が足りなかったなと痛感しました(笑)。
外国人材採用をご検討中の事業者の方へのアドバイスとしては、もし私たちと同じような“未整備”の状態でも、ユアブライトさんのような支援機関のサポートを受ければ、少しずつ取り組んでいけると思います」
まだスタートしたばかりながら、ロザリオの聖母会さんの“未来”づくりのために、外国人材活用への確かな手応えを感じていらっしゃるようです。